とけてしまいそう、といつも私は思う。人肌に触れていると溶けてしまうチョコレートのように、私も柔造さんに触れられるとその部分がじわりじわりと溶けてしまいそうだった。 ある日ふと柔造さんにそう言うと、彼はいつものおひさまのような笑顔を浮かべながら「確かに自分、甘そうやもんなぁ」とからかいを含む声色で言われる。甘そうって、どういうことだ。 「なんやろなぁ…何か、舐めたら甘そうやん」 「舐め…っ?!」 「甘ったるいけどチョコレートゆうより…あぁ、べっこうあめみたいなかんじやな」 「…べっこうあめも甘ったるくありません?」 どちらも大量の砂糖からできていることに変わりはない。私がそう尋ねると、柔造さんはぽすんと私の頭を軽く撫でるように叩いた。 「自分は昔から変わらん、あったかくてやさしそうな味がしそうや」 「ふ、複雑です…!」 「そやろか」 柔造さんは喉でくつくつと笑いを漏らしながらぐいっと私を自分の胸へと引き寄せた。急なことに「わぶっ」と思わず色気なんてちっともありやしない声が漏れる。額を柔造さんの胸にくっつけて、スンと鼻を鳴らすとおひさまみたいな匂いがした。柔造さんの匂いだ。 「柔造さんは、おひさまみたいですね」 「太陽?なんや、お菓子やないんかえ」 「そのあったかい光で、私なんて簡単に溶かされてしまいそう。じわりじわり、溶かされて…なくなってしまいそうです」 「なくなったら、泣いてまうで俺」 「…泣くんですか?」 「……………おん」 「なんですその間は。…その時は、べっこうあめを渡してあげますね。小さい子にやるみたいに、飴あげるから泣き止んでねって」 「アホにしとんのか?」 「ひとつのあいのかたちです」 「………あぁもう、好きや」 「私も、です」 ぎゅっと強く抱きしめられて、あぁ、本当に溶けてしまいそうだ、と思う。触れられている腰が、背中が、腕が、じんわりと熱くなった。もし私が本当にべっこうあめだったなら、柔造さんのこの熱にとっくに溶かされていたに違いない。そう思いながら、私はこのぬくもりを確かめるようにそっと柔造さんの背中に腕を回した。 シュガーメルト 120406 |