真新しい教科書のページをパラパラと無意味にめくりながら、スラグホーン先生の言葉に適当に耳を傾ける。OWL試験では可以上の人しかこの授業を選択できないので去年に比べたらぐっと数が減っていた。仲の良い友人たちもそれだけの成績が取れなかったり自分には必要ないからと選択すること自体を捨てたりする人が多く、運が悪いことに隣の席に座れるほどの友人がいなかった私は一人で授業を受けるつもりでいる。流石に初日からペア調合はないだろう、そう思っていたのだがスラグホーン先生は「それではペアで調合を初めてもらおう」と私の期待を粉々にする言葉を告げた。 次々とペアを作っていく周りの人に置いていかれないように辺りを見渡すが、そこにはもう声をかけられるほどの友人は見つからなかった。いたとしても、もうすでに他の子とペアを組んでしまっている。……まぁいい、適当に余った人と組もう。そう思い浅く溜息をついた途端、ぽんと後ろから肩を叩かれて反射的に振り返った。 「シリウス?」 「あぁ。、余ってるんだろ?ペア一緒に組まねぇか」 「あれ、ジェームズは?」 「あいつはピーターと」 「じゃあリーマスは」 「リーマスはそもそも授業を取ってない。……お前、そんなに俺と組みたくないのか?」 「まさか。ペアいなくて困ってたところだし、助かるよ。よろしく」 こちらこそ、とシリウスは告げてから空いている机へと私を誘った。私は肩に掛けている荷物を一度抱え直して、彼についてゆく。この最初の授業でペアになるということは、なんだかんだで1年よろしくコースかと思いながらシリウスの隣のスペースに荷物を下ろした。 「、魔法薬学の授業はどうだった?難しそう?」 「んー…いや、そうでもないんじゃないかな、1から5年までちゃんとやってれば。6年は実習とレポート作成が主みたいだし」 「えっ座学ないの?!」 「あるにはあるよ、ただ調合が多いだけで。まぁ、だから楽しそうかなーってかんじ」 友人たちにそう告げると、ちらほらと「なら私も魔法薬学取ればよかったー」などという言葉が聞こえるが、いやスラグホーン先生の課題の多さを忘れたわけじゃないだろうな君達。あの先生の課題に私はあと2年も苦しまなくてはいけないんだぞ、と思いながら私が選択していないマグル学や魔法動物飼育学の授業の感想を友人達から聞いた。なるほど、まぁ、どこも同じように大変らしい。 「、ちょっといいか?」 「あぁ、さっきはどうも、シリウス。なに?」 「課題だけどさ、できたら見せてもらってもいいか?なんか抜けてたら怖いしな」 「じゃあ私もいい?そしたら私も助かるよ」 「あぁ、じゃあそういうことで」 「うん、よろしく」 ひらひらと手を振ってシリウスと別れると、そんな私たちの様子を見ていた友人たちがぱちくりとした視線で「どういうこと?」と訴えてくる。いや、たださっきの授業でペアを組んでもらっただけだよ、と説明すると、ふぅんとさらりと流す友人もいれば、浮ついた出来事を期待してにやりと笑う友人いた。これ以上のことなどあるわけないというのに。 「で?で?どうしたのシリウスと?」 「いや、ただ一緒に調合して終わったけど?」 「それだけ?ほら、シリウスってなかなかのこと気に入ってるじゃない?」 「……そうでもないよ。ほらこの話はもう終わり!」 私とシリウスがそれ以上なんてそんな馬鹿な。月とスッポン、とまでは言わないがそれほど私と彼は釣り合わない。ありえないと渇いた笑みを漏らしながら、友人が再開した他の授業の話に耳を傾ける。 そう、この時の私は約3ヶ月後に今話題にしていた彼から告白されることなど微塵も思っていなかったのだ。 111224(6年生のおはなし。我が家のヒロインは魔法薬学スキーですね…。) |