![]() 「……そっか。シリウスと」 「えぇ。……レギュラスは全てを分かってたみたい。よかった、って笑ってくれたわ」 授業も全て終わった夕方の部屋のベットの上で、私はチェルシーに午前中にあった出来事を話していた。どうやら魔法薬学の授業の一騒ぎは彼女の耳にも届いていたらしく、そこから予想はついていたのだろう、特に驚いた様子もなくぽつりとチェルシーはそう告げた。 「チェルシーは気付いてたんでしょ?私がレギュラスを見ていないことに」 「……まぁ、シリウスを好きなんだろうなぁってことは、数年前にはとっくに」 「そんなに早くから?!」 「の一番近くにいたからね」 「じ、じゃあ他の子たちも気付いて……?!」 「さぁ?いるかもしれないけど、気付いてない子が大半じゃないかな。……レギュラスもとっくの昔に気付いていたしね」 その言葉にそう、と小さく返事をする。先ほどレギュラスのところに向かったら、私から何か言い出す前に彼は「ようやく気付いたんだね、」と笑顔でそう告げた。確かに私はレギュラスを愛していた、そしてきっとレギュラスもそうだったと思う。けれど私はレギュラス・ブラックではなく、“純血”である彼を愛していたに過ぎなかったのだと今なら分かっていた。申し訳なさが募るけれど、いくら謝ったところで私が彼に何かを与えることはできない。 「レギュラスには、悪いことをしたわね」 「……ここでひとつ、に報告」 「え?」 「私、先日、シリウスにいい加減を振り向かせてやって、って言いに行ったんだけど」 「は、はぁ?!」 「そこでシリウスに言われたんだよ、『お前で2人目だな』って。……1人目は、分かるよね」 「…………会話の流れでいくと、レギュラス?」 「そ。レギュラスはといるのが楽しかったと思うよ。レギュラスがこう言ってた、ってシリウスが言ってた」 『といるのは楽しかったし、幸せだった。でもは僕に兄さんを重ねていた。本当にを幸せにするには僕じゃ駄目だったんだ。僕じゃを幸せにすることはできない。それができるのは兄さん、……シリウス・ブラックだけなんだよ。には幸せになってほしい。……頼んだよ、兄さん』 そう告げて、チェルシーはにこりと小さく笑みを浮かべる。私は込み上げてきた涙を飲み込んで、小さくけれどもはっきりと彼女にありがとう、と告げた。レギュラスには悪いことをしたなんて言うべきじゃない、告げるべきなのは謝罪よりも感謝の言葉だと、そう彼女は言いたいのだろう。それが十分に分かったからこそ、私はこれから何があろうとも幸せにならなくてはいけないのだと、強く心に刻み込んだ。 |