![]() 変身術の授業中、急にぞわりと嫌な予感を感じて一瞬動きを止める。そんな俺の様子にジェームズから「シリウス?」と声をかけられるが、俺はそれに返事をしている余裕などなかった。心臓が急に早鐘を打ち、寒気が背中を伝う。嫌な予感がすると、直感が俺に訴えていた。これがどこから来ているのかなんて考えなくても分かった。だ。彼女になにかがあったのだ。 俺以外の人は何も感じていないらしく、両隣にいるジェームズもピーターも変わった様子はなかった。それもそうだろう、噂は学校中に広がってるといえど、の姿を認識できるのはほんの数人しかいないのだから。嫌な予感がするとジェームズに小さく呟けば彼は小さく首をかしげ、しかしピンと来るものがあったのだろう、かいと尋ねられて頷くとジェームズは真剣な表情になった。ふとマクゴナガル先生を見ると先生も俺へと視線を寄こしてきて、それでふと思い出す。ああそうだ、マクゴナガル先生にもが視えているんだっけ。 「先生、」 「いけません、ブラック。授業中です」 「でも、」 「授業中です」 「……すみません!」 先生もの異変を感じ取ったのだろう、俺のこの先の行動が目に見えていたはずだが先生は頑としてそれを許可しようとはしなかった。けれどやはりこのまま教室にじっとしていることなんて出来るはずもなく、俺はそう言い残すと教室を飛び出した。 「ブラック!」という先生の呼び止める声が聞こえたけれど追っては来なかった。先生もが心配なくせに、とやりきれない思いを感じながら唇を噛み締める。になにがあったっていうんだ。なんでこんな嫌な予感がするんだ。 俺はわけが分からず、けれどがいる場所も分かりはしないのでとにかくひたすら廊下を走り抜けた。無駄だと分かっていても、空き教室や厨房、中庭、大広間など少しでもがいる可能性があるところをしらみつぶしに探すが、勿論彼女の姿があるはずはなく。 「どこに、いやがる……!」 はゴーストだ。ゴーストはもう既に一度死んでいるから、再び死ぬことはできない。だから彼女が死んでいるということはありえないだろう。この嫌な予感はそういう意味じゃないのだと、それは分かっている。しかしそれだけしか分かっていない。 ここ数日姿を見ていないが、彼女がホグワーツ内にいることは確かなので絶対どこかにはいるはずなのだ。いつか彼女は言っていた、ホグワーツからは離れられないのだと。しかしホグワーツ中を探し回るなんてそんな無謀な策はやるだけ無駄だ、この敷地の広さをなめてはいけない。彼女がいそうなところは探した。それでもいなかった。だとしたら、彼女はどこにいるのか。 |