「いいじゃん、ホグワーツにいれば」

「……さっき私が言ったこと、聞いてた?」

「あぁ、ちゃんと全部聞いてた。でも二の舞になんてならないから、そんな心配はいらない」

「言い切れるわけないわ。……私はもう死んでいるから、死ねない。でもシリウスはそんなことない。いつか、あっけなく死んでいくんだわ。それもきっと、私の知らないところで」

「俺がゴーストになってに会いに来れば済む話だろ」

「だめよ。ゴーストになんてならないほうがいいわ。シリウスはちゃんと死んで」

「……好きなやつに『ちゃんと死ね』と言われるのも複雑だな」

「もう!」


真剣な話をしてるのよ、とに睨まれて肩をすくめる。いやでも本当に、好きな人に「ちゃんと死んで」と言われるのはなかなか複雑な心境だ。嬉しいのやら哀しいのやら虚しいのやら。がゴーストだからこそ出てくる台詞で、きっと普通の人間同士のカップルだったら一生聞けないだろうな、とどうでもいいことを思いながらそっとに手を伸ばして彼女を抱きしめた。そうだよ、結局は。


「つまりだ。俺はが好きだし、お前も俺が好きなんだろ?それだけじゃだめなのか?」

「……いいの?」

「いいんだよ。たとえ俺がホグワーツを卒業して、死んで、ゴーストにならなくても、何度でも生まれ変わって俺はお前に会いに来るよ」

「……そういう台詞がガキっぽいのよ」


は嫌そうにそう呟いたけれど、俺には彼女の本心が分かりきっていたのでただ笑みを漏らすだけだった。どっちがガキなんだか、と思いながら抱きしめていた腕を少し緩めて、と額と額をくっつける。至近距離にあるの瞳はゴーストだとは思えないほど人間染みていて、光できらきらと反射する彼女の瞳がどうか永遠に続きますようにと、こっそりと願った。


「きっと何度も生まれ変わって、俺は何度もに恋をするよ。その輪廻の中で、いつか、俺とお前がずっと一緒にいられる道を探そう」


そうに呟くと、はしばらくしてからこく、と頷く。ゴーストは泣かない。泣けないはずなのに、の頬に一粒の滴が伝ったような気が、した。