今日もと会って少しだけお喋りをして、それから俺が図書室で勉強をすると言ったらもついてきたので初めての図書室デートとなった。とは言ってもマダム・ピンズがいるので飲食は勿論、お喋りもなにもせず、俺はただ黙々と勉強していただけなのだが。その間にもは書架の棚をうろうろしたり俺が勉強している様子をじっと眺めていたりと動き回っていたが、それらが邪魔にならないというのが不思議なものである。恋は盲目とはこのことなのだろうかとふと思った。

俺は現在5年生で今年の末にはWLO試験があるため、今年から空いている時間を見つけては勿論ジェームズたちと悪戯を考えたりもするが、それと同時に勉強もするようにもしていた。将来どんな職業に就くにしろ、これからの授業を選択することに関わってくるため落とせない試験である。俺は周りから勉強の面に関しては天才だとか秀才だとか言われることがあるが、それは違った。俺は元々神様から特別なものを与えられて生まれてきたわけではないし、才能があるわけでもない。みんなが知らないところで努力をしている、ただそれだけなのだ。ただ、記憶力と応用力はそこそこあると思うので、これを他人が聞いたらただの驕りだと言われるかもしれないけれど。


「そういや、ってどこの寮生だったんだ?」


勉強がひと段落ついたので休憩にと、中庭の人気の無い場所にあるベンチに腰掛けて隣のに尋ねると、は「あれ?言ってなかったっけ」と逆に驚いてローブのポケットをごそごそと探り始めた。そしてすぐに出てくるのは水色と紺色のストライプのネクタイ、それは彼女がレイブンクローであったことを示している。


「賢き者が集う寮、レイブンクローですけど?」

「頭良かったのか?」

「まぁ、そこそこね」


そう言いながらはネクタイを襟の後ろにを通し首元で締めようと手を動かすものの、上手くいかないのか締めては解いて、締めては解いてを繰り返していた。この調子だと長い間ネクタイを締めることをしていなかったのだろう、理由は分からないけれど、不器用に動く手が見ていられなくて俺は溜息をつくとシュルリと自分のネクタイを外す。「よく見とけよ」と告げてからゆっくりとネクタイを締めると、は途中で締め方を思い出したらしくちゃきちゃきとネクタイを締め始めた。そんなを眺めながら、もうひとつ前から聞きたかったことを訊ねてみる。


「いまの姿って何年生なんだ?」

「私が死んだのは6年生のときだったけど」

「……俺より年上?まさか」

「東洋人は若く見えるものなの」


どう見たっては俺より10センチ以上背が低いし、顔のつくりも幼く見える。東洋人は見た目が幼いと聞いてはいたものの、はせいぜい4年生くらいだと思っていた。それが6年生だって?俺のほうが年下だということに少しショックを受ける。

そのうち、できたと小さく呟く声が聞こえてに視線をやると、ネクタイが少し緩められて締められていた。水色と紺色のストライプ。それは彼女によく似合っており、しかし黄色と赤色のグリフィンドールのネクタイも似合うだろうなと自分のネクタイを見下ろしながらそんなことを思う。


「どう?どう?シリウス、私頭良く見える?」

「前より可愛く見える」

「もうっ!」


真剣に答えてよと返すに、これでも真剣なんだけどと返事をするとは口をつぐんで急に静かになった。そんなが可愛くて、喉の奥で笑みを漏らすと痛みなど感じないけれどの手が思いっきり俺の頭をはたく動作をする。「そ、そんなこと、そういう顔で言うんじゃありません!」と呟いたの顔が赤くなっているのがあまりにも可愛かったので、怒られると分かっていながらも俺は再び笑みを漏らすのであった。