![]() 「シリウス、最近彼女でもできた?」 「は?……なんで?」 「いや、最近明るくなったというか、優しくなったというか……よく笑うようになったし」 「彼女ができたとしか考えられん!さて、お相手は誰なんだい?」 夕食の時間に小声でこっそりといつもの悪戯仕掛け人メンバーが尋ねてくるものだから、俺はどうしたものかと実はすぐそばにいたに視線を向けた。傍から見れば俺はなにもない空間に視線を向けていることになるのだから、おかしなことこの上ない光景だろう。実際、ジェームズたちの不思議そうな視線を感じた。 は俺の話を聞いていたのか、苦笑を漏らしながら「シリウスがいいって思ったなら、言っていいよ」と告げる。ジェームズたちに話すのは俺は嫌ではないし、仲間として言いたいという気持ちもどこかにあった。けれどもゴースト、しかも俺にしか見えない相手と恋愛をしていると言ったら、それこその気持ちはどうなのだろう。声を出すわけにもいかないので口をぱくぱくさせて「はいいのか?」と訊ねると、は少しはにかむように微笑んでから小さく、けれどもはっきりと頷いた。そんなを見て俺も心を決める。へと向けていた視線をジェームズたちのほうへと戻した。 「最近できたよ、彼女」 「やっぱり!誰なんだい?!」 「そこにいる」 「……そこ?」 俺が視線を向けた方向にジェームズやリーマス、ピーターが視線を向けるものの、俺が誰のことを示しているのか分からないようでみんなそろって首をかしげた。それも当たり前だろう、は俺にしか見えないのだから。俺はわざとぐっと声を落として、「他のヤツには言うなよ」と前置きしてから意を決して告げた。 「最近出来た彼女、っていうんだけど。……ゴーストなんだよ」 「……えぇ?!」 ジェームズとピーターの驚いた声が重なった。リーマスは声には出さなかったものの、表情は驚きで満ちている。そりゃ、驚くよな。そう思いながらのほうを向くと、彼女は苦笑を浮かべて俺の耳へとすいと顔を寄せてきた。 「やっぱりゴーストとの恋愛って非常識だよね」 「なに、愛し合ってたら問題ないの一言だ」 そう呟いての頬に触れるようにしてキスをする。そしていまだに呆然としている3人を眺めると、そばにいるから「……そうだといいね」とひどく静かな声が聞こえた。その声にふと疑問を感じてを振り向くが、彼女はいつものような苦笑交じりの笑みを浮かべているだけだった。 |