「いつから私が皇毅さまの関係者だと?」 「もしかしたら、と思ったのはわりと最初のほうでしたね。噂は聞いてましたから」 「…」 むう、と口を尖らせると彼は私の片方の手首から手を離して、そっと私の首筋を撫でた。綺麗な指先は、やはり他の男に比べて触られて嫌な気はしない。首筋をなぞり、鎖骨をさらりと撫でたその手にひくりと身体を震えさせた。そんな私にくすりと彼は笑みを零す。 「それで?欲しい情報は引き出せました?」 「…意地が悪いわね」 「こういう性分なもので」 「噂と全然違うわ。清雅からの情報にも、そんな悪い評価はなかったのに」 「…」 私にまっすぐ向けられていた視線をふと反らしたのはどうしてかは分からないが、今まで私が追い詰められていた立場を好転する機会だと、自由になった手を彼の頬にひたりと当てる。吸い付くような肌触りに、いつもの客はこうやって私の肌を感じているのだろうかとふと思った。ふむ、なかなかくせになる楽しさだ。 「あの」 「うん?」 「…なんか気が抜けますね。結局、貴女の欲しがってた情報ってなんなんです?こう言っちゃなんですが、特に悪事にも手を染めている気はありませんし、叩いたって埃もなにも出て来ないと思いますけど」 「別にないわよ」 「…は?」 けろりと白状すると彼はなんとも間抜けな顔をした。なにを言うんだこいつは、と表情が私に告げている。私は相変わらず手触りのよい彼の頬をぺたぺたと触りながら、笑みを浮かべて答えた。 「変わったお客で、気になってただけだわ。そしたらとある筋から貴方が官吏であると知って、清雅にちょっと調査をお願いしたのよ」 「え、」 「貴方のことを調べたのも、いつも貴方が来たら私がお相手するのも、皇毅様の命令じゃないわ。私の意思よ。…まぁ、清雅は勘違いしてたみたいだけど」 貴方もねと告げると彼はしばらく呆けた表情のまま固まり、そして大きくため息を吐いて私の上から身を起こした。なんですかそれは、今までの警戒は、あぁでも結局は、いやでも今までの苦労は、などとぶつぶつ言っているのが聞こえる。 「どうかしました?玉さま」 にこりと笑みを浮かべながら彼に尋ねると、彼はふて腐れたような様子で私を振り向き、いえ、なんでもないですよ、と答える。その言葉に私は更に笑みを深くしながら、ぺたりと彼の頬に触れた。かわいいひとね。 121209(まだ続きそうだなぁとか思ったり) |