「そういや、お前。年は?」

ふと思って資料の整理をしていたに尋ねると、はとんとんと紙の束を揃えながら答えた。

「年齢ですか?16ってことになってますよ」
「…訳ありな口調だな」
「実年齢だと、男として名乗るには体格が怪しすぎますから」

なるほどと思って「あぁ、」と返事をすると、は背伸びをしながら棚の上のほうに束ねた資料を戻した。棚の縁に片手を添えて爪先立ちをしているその姿に、言われてみれば彼女は背が低いほうなのかもしれないと思う。確かに、16という年齢ならば丸みのある体つきも、高めの声も、低い身長もごまかせないことはない。だが。

「本当はいくつなんだよ」
「そんなに知りたいんですか?私のこと」
「はっ。自意識過剰も大概にしろ、サバ読み女。減らず口叩いてないで仕事しろ」
「してますしてます」

ばさばさという紙の擦れる音が聞こえる。数秒経ってもやってこない反応に、これくらいの暴言には彼女の奇妙な性癖は反応しないのだと学習した。

「…その妙な性癖って、誰彼構わず発動されんのか?」

再びふと思ったことを口に出すと、書簡と戦っていたは驚いたような顔をしながら振り返った。俺は別に焦る仕事でもないので頬杖をつきながらそんな彼女の様子を眺めていると、は眉を寄せて疑わしそうに口を開く。

「今日はやけにおしゃべりですね、清雅さん。なにかありました?」
「別に」
「…先程の問いの答えなら、是ですけど」
「フーン」
「あっすっごくどうでもよさそう」
「いや、誰彼構わずこの被害に遭うのかと思うと可哀相すぎて心が痛むぜ」
「やぁん、清雅さんそんなに私のこと…?!私のことで心を痛めさせてしまって申し訳ないです!」
「…」

どうやら奇妙な性癖を呼び起こしてしまったらしいが、先程の言葉とどこがどう違うのかよく分からない。何の単語が彼女の奇妙な性癖を呼び起こしてしまったのだろうか。頬を赤らめて自身を抱くように両腕を絡ませているその姿は、いじらしいと言えばいじらしいかもしれないが、今のは男の格好なのだ。端から見れば気持ち悪いことこの上ない。

「おい、正気に戻れ変態。仕事しろ」
「あぅ、し、痺れる…っ!」

痺れるって、一体いまの言葉のどこにそんな要素があったんだ。俺は口元を引き攣らせながらそう思い、頬杖をといた。の趣味は到底理解できそうにない。




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